▲ダイハツから新たに軽自動車のミラ トコットが誕生した。公道試乗が行われたので、その感想をお伝えする ▲ダイハツから新たに軽自動車のミラ トコットが誕生した。公道試乗が行われたので、その感想をお伝えする

ダイハツに新型軽自動車が登場

ダイハツからミライースのコンポーネントを使った新しいモデルが加わった。その名は“ミラ トコット”

字面と聞こえる響きからも可愛らしさが想像できる。カタログで見るよりも実物を目の前にして感じるのは、プレーンで使い勝手が良く、飽きのこない軽自動車という雰囲気だ。

かつて昭和40年代初めに登場したダイハツ フェローというモデルは、塊感のある素朴なデザインであった。それを基に現代風にアレンジしてトコットにも反映させているようだ。

また、セラミックグリーンメタリックという色は、工業機械などに使う色に似ていて、最大の特徴は汚れが目立ちにくいところだ。これはダイハツ側も知らないようであったが、良くいえばそのままでもコンディションを保てる色といえよう。

内装も水平基調になっており、とにかく視認性や扱いやすさを優先しているのがわかる。立ったAピラーは空力よりも視認性を優先している。

シート生地にも汚れが目立たない素材や色を使っている。チープな雰囲気は、モノが過剰すぎる現代では逆にプレーンでオシャレに感じられることもあるだろう。
 

▲水平基調のダッジュボードパネルと立ったAピラー▲水平基調のダッシュボードパネルと立ったAピラー

乗り心地よりも安全性ファースト

エンジンを始動してみると3気筒エンジンは軽やかなクランキングで鼓動する。静粛性に富んではいないが車のキャラクターには合っている。

試乗は自動車メーカーのエンジニアが最も信頼する千葉県のかずさアカデミアパークで開かれた。ここの石畳の道は車の性能をテストするにはとてもいい。ボディ剛性の状態が良くわかるのである。

早速、Dレンジに入れてアクセルを開けるとソフトに動き出した。優しいと言った方が良いだろうか。走り出してすぐに最大の難関となる石畳がある。けっこう驚くほどの振動を起こす。フロントは身が詰まっているのでしっかりとしているが、Bピラーから後ろの剛性不足は否めない。スタイリングには優しさを感じるが乗り心地は振動を感じてしまうのだ。

一般道に出るときは下り坂であるが、CVTが状況にあったギア比を選んでいるので不快感のない適切なエンジンブレーキである。

次は上り坂だ。300mほどの距離であるがNA658ccにはつらいであろう。上り坂でアクセルを踏むと、エンジン回転数が先に上がり、遅れて加速が始まる。CVT特有の節度のない伸び縮みをしているようなエンジン特性になってしまう。

しかし、ダイハツのエンジンは剛性が高いので回転数が上がり、高負荷になっても嫌な振動はない。とてもソフトなセッティングで、起伏が少ない平坦な道ではトコトコと走るそんな可愛らしいイメージが想像できる。

カーブの際のステアリング操作で、素早い動きをしても唐突な動きをしないようなセッティングになっている。ダイハツの女性陣をけん引して造ったモデルなだけあってハードな感じは一切ない。

所有して毎日使う車には際立った特徴はいらない。必要なのは安心と万が一の安全装備である。

トコットのボディ剛性は低いかもしれないが、その代わりに衝突時の衝撃をボディ構造で分散し、乗員に与える影響を最小限にとどめる設計がされているそうだ。

しかも安全装備はこの価格の軽自動車ながら、SRSカーテンシールドエアバッグなど6つのエアバッグで保護、ステレオタイプのカメラで衝突回避、車線の逸脱も教えてくれる。

その他にも安全に力を入れて、装飾よりも安全に大きく舵を向けた軽自動車なのだ。車はプレーンだけど安全は乗用車並みの装備という部分がトコットの最大の特徴である。
 

▲グレードはG“SA Ⅲ”▲グレードはG“SA Ⅲ”
▲ボディカラーはセラミックグリーンメタリック▲ボディカラーはセラミックグリーンメタリック
text/松本英雄
photo/篠原晃一

【SPECIFICATIONS】
■グレード:G“SA Ⅲ” ■乗車定員:4名
■エンジン種類:水冷3気筒12バルブDOHC
■総排気量:658cc
■最高出力:38(52)/6800[kW(ps)/rpm]
■最大トルク:60(6.1)/5200[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:2WD
■全長x全幅x全高:3395 x 1475 x 1530(mm) ■ホイールベース:2455mm
■ガソリン種類/容量:レギュラー/30(L)
■JC08モード燃費:29.8(㎞/L)
■車両価格:129万6000円(税込)