レクサス LS▲2021年10月に発表された改良版の新型レクサス LS。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏によるインプレッションをお届けする

改良が続けられてきた乗り心地

レクサスのフラッグシップサルーン LS。2017年に5代目が登場してから5年が経過した。

この5代目モデルは、今までにない試みのシックスライトのデザインを採用。また、センタークラスターは、先進的でイノベーションを感じさせる高度支援運転技術を見据えたものとなっている。

しかし、個人的にはこの日本を代表するフラッグシップに及第点は与えられなかった。その理由は、エアサスペンションの追従の速さなどのバランスによって起こる不自然な動きだ。

5代目のLSは、それまでのモデルとは異なった新たな考え方でエアサスの構築に取り組んだモデルだ。これはレクサスにしかできないフラッグシップとして、未来を見据えた新しい乗り味の追求のためのチャレンジだった。
 

レクサス LS

そこから年次改良ごとに、1年目、2年目、3年目とLSに試乗をさせてもらっている。確かに少しずつであるが良くなっていた。特に目線がブレなくなってきている。

夜間のヘッドライトの上下の動きにも安定性がある。「コツコツと改良しているんだ」と試乗するたびに感じるのだ。

着実に改良を重ねるのは、宮本武蔵の『五輪書』で言うところの「毎日の鍛錬は“昨日の己に勝つ”」ということであるが、量産車はマスが大きいだけにかじを取ってもすぐには良くならない。プロトタイプが良好でも量産ではまた違った現象が起こったりもする。

話が少し脱線をするが、テストドライバーというのは何度も同仕様の車に乗っていると感覚が鈍くなってしまうが、ステアリングに握った瞬間に同じ車でも初めてのように感じなければならない。

そんな彼らのフィードバックを元に、無限大の試験データをもつといえる公道で絶えず改良を重ねてきたことがうかがえる。
 

首都高速で運転支援システムを試す

レクサス LS

それとフラッグシップにあって、ADAS(先進運転支援システム)がもう少しという印象は否めなかった。これも必死に改良をしていたに違ない。

ドライバビリティにおいては、エンジンと変速機の仕様を変えてより一層ラグジュアリーな動きになってきた。トランスミッションとエンジン制御の関係は乗り心地にも大きくかかわる。

年次改良の中でも大きく進化したのは2021年4月である。4年目の大きな進化はAWDのみにもたらせた「Advanced Drive」だ。トヨタ、レクサスは公言をしていないが、ほぼレベル3の自動運転に近い仕様が装着されたという。

残念ながら私はこの機会にドライブすることはできなかったが、このたび日帰り800kmの長距離を最上級グレードである500h エグゼクティブ アドバンスド ドライブで走ってみた。
 

レクサス LS

まず、走り出しの動きである。アクセルをゆっくりと踏んでもエアサスでタメを作って乗員に優しい負荷を与えている。これは高級サルーンでは大切な走り出しの儀式だ。

その後の路面との追従性もしなやかだ。2.5tに迫る車重を意のままに操るのは容易ではないが実にあんばいよく収束する。エンジンとトランスンミッションの協調制御も市街地のどのシチュエーションでも大らかになった。

首都高速に入る。合流までの加速も堂々とした伸びやかさが特徴的だ。

トンネルのない部分でAdvanced Driveを試す。手はステアリングに添えているが、リニアなステアリング操作は上級者のドライビングである。

そこから3号線を使って東名高速方面に移動する。
 

レクサス LS

アメニティも完璧だ。乗り心地も非常に良質になっている。前後左右のエアサスがきちんと仕事を割り振っていて、これまでとは別人の装いである。

東名高速の東京インター近くでAdvanced Driveを一度切り、ステアリングを握ってしばらく走ってみる。中間付近の左右に振れる感触も激減した。ブレーキのコントロール性のリニアリティーも増している。

5年間のでフラッグシップとしての貫禄ある走りができた。ショーファードリブンで使用しても後席の人も家のハイバックソファに身を沈めているようであろう。

新東名でもAdvanced Driveを体験した。まぁ所々、自分自身でのドライビングとなるが、ずっと手放しではこれまた満足度は得られない。自分でステアリングを握ったフィールがあるからこそAdvanced Driveのありがたみがわかるのである。
 

レクサス LS

名古屋方面に向かって景色のいい浜松で昼食を取り、帰路についた。丸1日をかけた長距離試乗で、国内ではレクサスだけにしかできない貫禄ある乗り心地を改めて感じられた。

この貫禄は目に見えない改良を積み重ねた結果であると思う。年を取ったからといってすべての人間が貫禄を有するものではない。常日頃の理想に向けた鍛錬があるからこそ持てるのである。

イノベーションあるデザインと良いものを知る顧客を満足させる改良の結果が、堂々としたラグジュアリーセダンを作り出したのだと、5年間試乗して感じたのである。
 

レクサス LS
文/松本英雄、写真/尾形和美

▼検索条件

レクサス LS(現行型) × 全国
※流通状況により物件がない場合があります

【試乗車 諸元・スペック表】
●500h エグゼクティブ アドバンスド ドライブ

型式 6AA-GVF55 最小回転半径 6m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 5.24m×1.9m×1.46m
ドア数 4 ホイールベース 3.13m
ミッション CVT 前トレッド/後トレッド 1.64m/1.64m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) 2.05m×1.62m×1.16m
4WS - 車両重量 2400kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 5名 車両総重量 2675kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.14m
マニュアルモード
標準色

ソニッククォーツ、ソニックチタニウム、ブラック、グラファイトブラックガラスフレーク、レッドマイカクリスタルシャイン、ソニックアゲート、ディープブルーマイカ、ソニックイリジウム

オプション色

マンガンラスター、銀影ラスター

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※G-Linkは新車登録後3年間無料です

型式 6AA-GVF55
駆動方式 4WD
ドア数 4
ミッション CVT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ソニッククォーツ、ソニックチタニウム、ブラック、グラファイトブラックガラスフレーク、レッドマイカクリスタルシャイン、ソニックアゲート、ディープブルーマイカ、ソニックイリジウム
オプション色 マンガンラスター、銀影ラスター
シート列数 2
乗車定員 5名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 6m
全長×全幅×
全高
5.24m×1.9m×1.46m
ホイール
ベース
3.13m
前トレッド/
後トレッド
1.64m/1.64m
室内(全長×全幅×全高) 2.05m×1.62m×1.16m
車両重量 2400kg
最大積載量 -kg
車両総重量 2675kg
最低地上高 0.14m
掲載用コメント ※G-Linkは新車登録後3年間無料です
エンジン型式 8GR-FXS 環境対策エンジン H30年基準 ☆☆☆☆☆
種類 V型6気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 - 燃料タンク容量 82リットル
可変気筒装置 - 燃費(JC08モード) 14km/L
総排気量 3456cc 燃費(WLTCモード) 12.6km/L
└市街地:9.6km/L
└郊外:13.1km/L
└高速:14.2km/L
燃費基準達成 R12年度燃費基準
85%達成車
最高出力 299ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
356(36.3)/5100
エンジン型式 8GR-FXS
種類 V型6気筒DOHC
過給器 -
可変気筒装置 -
総排気量 3456cc
最高出力 299ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
356(36.3)/5100
環境対策エンジン H30年基準 ☆☆☆☆☆
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 82リットル
燃費(JC08モード) 14km/L
燃費(WLTCモード) 12.6km/L
└市街地:9.6km/L
└郊外: 13.1km/L
└高速: 14.2km/L
燃費基準達成 R12年度燃費基準 85%達成車
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。