5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2

障がい者が自ら運転する場合、自分に合った運転補助装置を選ぶ必要があります。

障がい者が自ら運転する場合、1:運転免許の条件や障害の状態に合っているか 2:手動(アクセル・ブレーキ)装置などの運転補助装置が操作しやすいか、を確認しましょう。
また、運転補助装置は定期的に点検を行う体制が整っていないので、中古車を購入する場合は特に注意が必要です。ディーラーや専業メーカーなどで自主的に運転補助装置の点検を受けるようにしましょう。

購入時のチェックポイント

1.手動(アクセル・ブレーキ)装置

1.手動(アクセル・ブレーキ)装置|5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2
写真はホンダの手動運転補助装置(フロアタイプ)
1.手動(アクセル・ブレーキ)装置|5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2
写真はホンダの手動運転補助装置(コラムタイプ)
主に、下肢でアクセルペダルとブレーキペダルを直接操作することが困難な人や、ペダルの踏み替え操作が困難な人が使用する装置です。
装置にはフロアタイプとコラムタイプの2種類があります。
フロアタイプは、コラムタイプに比べてブレーキ操作が容易で運転姿勢を保ちやすい特徴があります。

基本的な操作方法は、操作部を前方へ押すことで減速、後方へ引くと加速。操作部には方向指示スイッチやホーン、ブレーキロックなどのスイッチがあります。ブレーキロックスイッチは、発進や駐車の時だけでなく、信号待ちの時にも積極的に使用することで、万が一後続車に衝突された場合に車が前方へ飛び出すことを防げます。
これらの操作がしやすいかどうか、実車で確認するようにしましょう。

2.アクセル・ブレーキペダル誤操作防止装置

2.アクセル・ブレーキペダル誤操作防止装置|5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2
写真はニッシン自動車工業のケイレン止めプレート
主に、下肢の痙性や弛緩性麻痺によって不随意に伸展、屈折する人が使用する装置です。
ペダルの下に足が入り込んだり、誤動作でペダルを踏み込むことなどを防ぐことができます。
この装置には、ペダルを上方へ跳ね上げる方式と、ペダルの手前に遮蔽板を設置する方式があります。身体の大きい人や座ったときのバランスが不安定になる人は、下肢が前方へいきがちですから、跳ね上げ式が良いでしょう。
下肢の屈曲によって大腿部がハンドルに接触する人は、下肢用シートベルトを使用しましょう。

3.旋回装置

3.旋回装置|5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2
写真はニッシン自動車工業の旋回装置用ノブ
3.旋回装置|5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2
写真はニッシン自動車工業の旋回装置用ノブ
片手でハンドルを操作するための装置です。この装置を利用すると、操作中の運転姿勢が安定するなどの利点があります。

握り部の大きさや形状はさまざまなものがあるので、実車で自分の手で操作しやすいか確認しましょう。また、装置が長いほど、衝突時に怪我をしやすくなるので、注意が必要です。
手を装置に固定するタイプもありますが、衝突などでエアバッグが開いたときに位置によっては怪我をする恐れがありますから、購入時に販売店で確認しましょう。

旋回装置はハンドルの真上に取り付けるタイプ、ハンドルの内側に取り付けるタイプの2種類があります。それぞれの特徴は、下記のとおりです。
(1) ハンドルの真上に取り付けるタイプ
本来のハンドル操作力でハンドルを回すことができます。
(2) ハンドルの内側に取り付けるタイプ
ハンドルの真上に取り付けるタイプに比べ、操作する力は約15%増になります。
旋回装置の握り部にも種類があり、それぞれ特徴と選び方があります。

(1)ノブ型

手のひらと指を使って、テニスボールなどを握ることができる人が使用します。一般的にはこの旋回装置が多いです。
(1)ノブ型|5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2
写真はニッシン自動車工業の旋回装置用ノブ

(2)横棒型

手の関節を動かす力があって、指先でものをつかむことができるけれど、手のひらと指を使った握りのできない人が使用します。
(2)横棒型|5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2
写真はニッシン自動車工業の旋回装置用ノブ

(3)手掌横型

手の関節は動かせるけど指を動かせない人が使用します。
(3)手掌横型|ひとり一人に合った福祉車両を選びましょ
写真はニッシン自動車工業の旋回装置用ノブ

4.左下肢操作用アクセルペダル装置

4.左下肢操作用アクセルペダル装置|5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2
写真はフジオートの左アクセルペダル
右下肢に障がいのある人が使用する装置です。正しい運転姿勢のまま左下肢でアクセルペダルを操作することができます。
足踏み式の駐車ブレーキである車には取り付けが困難な場合があるので、避けるようにしましょう。
この装置には吊り下げ式と床置き式の2種類があります。吊り下げ式は運転席の足元フロアに装置がないので、かかとが引っかかりにくく、土などの汚れがつかないため操作が簡単です。

5.足動装置

5.足動装置|5.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方2
写真はホンダのフランツシステム・ステアリングペダル
主に両上肢に障がいのある人が使用します。
運転席の足元左側に増設されたステアリングペダルに左足部を固定し、自転車のペダル操作と同様に左足を回すことでハンドル操作を行います。
また、アクセルペダル、ブレーキペダル、チェンジレバーの装置は右足で操作します。
この装置を取り付けできる車種は限定されます。詳しくは自動車メーカーや福祉車両の加装専業メーカーなどに確認してください。
監修/国立障害者リハビリテーションセンター熊倉良雄氏