4.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方1

障がい者が自ら運転する際、まず乗り降りしやすいかどうかを確認しましょう。

車を選ぶ際、まず運転免許の条件に車の大きさが適合しているか、車いすを使う方は乗降性は良いか、力の弱い人はハンドルをスムーズに回せるかを確認しましょう。
また、正しい使い方をしないと怪我をする危険もありますから、取扱説明書があるかどうか確認し、使用前に熟読するようにしましょう。

購入時のチェックポイント

実車で乗降性を確認するポイントは、下記のとおりです。

1.運転席のシートの高さ

車いすの座面と運転席のシートの座面とが、同じ高さだと車いすからの移動がしやすくなります。たいていの車いすは地面からの高さが50cm前後ですので、運転席のシートがそれ以上ですと「よじ登って」乗り込むことになりますので注意が必要です。

2.運転席のドアステップの高さ

乗車の際に下肢を持ち上げられる高さか確認しましょう。

3.運転席のドアステップの幅

最近の車は、側突安全基準の高まりにより、ドアステップの幅が広い傾向にあります。そうなると、車いすと運転席との距離が大きくなります。その際、運転席に専用の移動ボードなどがあるタイプだと便利です。
購入時のチェックポイント|4.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方1
写真はトヨタウィッシュ(旧型)のフレンドマチック取付用専用車
4.車いすの収納性|4.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方1
写真はトヨタイスト(旧型)のウェルキャブ
4.車いすの収納性|4.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方1
写真はニッシン自動車工業の車いす収納装置

4.車いすの収納性

自分一人でも車いすの積み降ろしがしやすいかどうかを確認しましょう。運転席のシート座面が高いほど、車いすを持ち上げる力が必要になります。また運転席と助手席の間にあるセンターコンソールの高さにも注意が必要です。
車いすは必ず助手席の後ろ側に置くようにしましょう。助手席に置くと、運転中や万が一の際、ドライバーに車いすが飛んできたりする危険がありますから、避けてください。

車いすを専用のリフトで車内や車外(屋根)に収納する装置もあります。それぞれ特徴があるので、実際に試してみましょう。

なお、乗降と車いすの積み降ろしにはコツがあります。リハビリテーション施設などで習うとよいでしょう。

5.運転姿勢の安定性

運転席に座ったら、次の点を確認しましょう。
(1) 運転席のシートが、ハンドルやブレーキなどの装置が操作しやすい位置へ調整できるか。運転席シートの、前後調整用のスライドレールは水平ではなく後傾しているので、下肢に障害があると前方への調整が難しい場合があります。この場合、電動調整式のシートが便利です。
(2) 前方の視界が確保でき、ヘッドレストが後頭部の近くに調整できるか。ヘッドレストが後頭部から離れていると、衝突時に危険です。背もたれ部(シートバック)が上下で分割して調整できるタイプの車もあります。
(3) カーブなどでの運転姿勢を保つための、サイドサポートやシートの形状はどうか。ベンチシートのタイプは体を支えにくいので避けたほうが無難です。
なお、運転席用に作られた脱着タイプの専用シートにあらかじめ乗り換え、そのまま運転席の位置に固定できる車もあります。衝突安全性や長時間のドライブにも疲れにくい構造になっていますが、サイズが合っていないと意味がありませんので、実際に座ってみるなどして確認しましょう。
5.運転姿勢の安定性|4.障がい者が運転する福祉車両(自操式)の選び方1
写真はトヨタエスティマ(旧型)のウェルドライブシステム

6.ハンドルの操作性

ハンドルをスムーズに回せるかを確認しましょう。操作する際の重さは、一般の車と同じものがほとんどですが、なかには専用のパワーステアリングを装備した車もありますので、ハンドルを回す力が弱い人、片手で回す人はこれを選択するとスムーズに回すことができます。

運転する際の注意点

たいていの運転席シートは専用には作られていませんので、褥瘡(じょくそう。体と、この場合シート座面との長時間の接触により、血行不全で壊死を起こす)予防として、1時間に1回以上は臀部を浮かせて血行を回復させましょう。
監修/国立障害者リハビリテーションセンター熊倉良雄氏