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運転中に雷雨にあったときの対処。車内で安全を確保する方法と注意点

運転中に雷雨にあったときの対処。車内で安全を確保する方法と注意点
いつ、どこに落ちるか分からなかった落雷。しかし、最近では研究が進み、雷雲の発生場所や落雷の危険度をある程度、予測できるようになりました。雷の発生を予測して落ちやすい条件や場所を避けることで、落雷の被害にあうリスクを下げることができます。

雷が落ちやすい時期と場所

落雷のイメージ


雷は、電気を帯びた雲と地上の間で起こる放電現象。日本では毎年、平均100件以上(2005~2017年)の落雷による人的被害、物的被害が報告されています。

一年を通じて発生しますが、太平洋側の地域では、特に積乱雲が発達する夏場に多く、落雷害の約6割が7~8月に集中。日本海側は夏場だけでなく、雪も積乱雲が原因なため、雪が降る11~3月の冬場も多いことが特徴です。

雷が鳴ったときの備え

積乱雲のイメージ


落雷のリスクを下げるためには積乱雲の接近をいち早く察知し、危険なシチュエーションから逃れることが大切です。インターネットやテレビ、ラジオなどから気象情報をこまめに取得しましょう。自分のいる地点の周囲に雷雲がないか確認するには、落雷地点の実況と、雷の活動度を予報している「雷レーダー」が便利です。

車や建物が近いときの避難方法

雷雲が接近してあたりが暗くなったり、急に雨が降り出したりするときは、近くに頑丈な建物や車があるなら、素早くその中に避難します。

車の中はコンクリート製の頑丈な建物に次いで、安全な場所。万一、車に雷が直撃してもボディ外側がアースとなって電気を地面に流すため、車内にいる人に被害が及ぶことはほぼありません。車を建物内に移動させることができればより安心ですが、大きな音に驚いて運転を誤るかもしれないのでご注意ください。

ただし、屋根が幌でできたオープンカーは例外。屋外にいるのと同じで乗員が落雷を直に受ける危険性があるため、頑丈な建物内に避難します。

JAFは140万ボルトの人工雷を車に落として、乗員や車にどれほどダメージがあるか実験。結果、車内にいた人間には影響ありませんでした。エンジンや電子機器もダメージを受けませんでしたが、ETCには影響することがあったので「落雷の中を走った後にETCゲートを通るときは注意が必要」とのこと。ただし、実験はあくまで人口雷によるものなので、より電圧が高い自然の雷では人や車へのダメージも大きくなる可能性があります。

雷雲の接近をいち早く察知する

雷は発達した積乱雲とともにやって来ます。積乱雲は背が高く特徴的な形をしているので、他の雲と判別しやすいでしょう。積乱雲は層が厚いため、真上にあると太陽の光を遮って周囲が真っ暗になります。

雷鳴が聞こえたら落雷した地点から10~15kmの範囲にいるということであり、すでに危険な状況です。次の雷が自分の所に落ちる可能性もあります。周囲が急に暗くなったり、雷鳴が聞こえたりしたら、すぐに安全な場所へ避難しましょう。

開けた場所から車内に逃げる

雷は地面から「高く・細く・突き出た」場所に落ちやすい性質があります。グランドや田んぼ、ゴルフ場、砂浜、河原、山の尾根などの開けた場所では他に高い物がないため、立っている人に直撃するリスクが特に高まります。

また、高い樹木や電柱のすぐそばも安全ではありません。「側撃雷(直撃雷の周囲で起こる放電)」を受ける可能性があるからです。近くにある車内や建物内に急いで逃げましょう。

車内にいれば雷の直撃を受けたとしても人間に被害が及ぶことは稀ですが、電子機器などに影響を受けることがあります。開けた場所に車を止めているとはに、建物内や他の建物がたくさんある場所、山の中にいるなら尾根よりも低い所、谷間の地形に車を移動させましょう。

保護範囲のイメージ図
 

車や建物が遠いときの避難方法

周囲が開けた場所にいて、すぐに避難できる車や建物が近くにない場合には「保護範囲」に逃げること。保護範囲とは、高い物体のてっぺんを45度以上の角度で見上げ、その物体から4m以上離れた範囲です。

ただし、保護範囲は開けた場所より落雷のリスクが下がる程度で、必ずしも安全ではありません。範囲内にいても落雷地点の近くで座ったり寝ころんでいたりすると、しびれやヤケドなどのダメージを受けることがあります。保護範囲は、開けた場所から建物内や車内、谷間の地形などに逃げることができなかったときの最終手段くらいに考えましょう。

駐車時に雷雲が上空にきたときの対応

雨の中、路上に駐めている車


雷雲が頭上に迫ってきても、車の中にいるなら慌てることはありません。雷雲の通過を冷静にやり過ごすことが大切です。

車内にいるときは金属部分に触らない

車に雷が直撃したとき、ドアノブや窓枠など金属表面が露出している部分に体が直接触れていると感電の恐れがあります。雷鳴が聞こえたら、金属部分に触れない乗車姿勢を取りましょう。

ただし、金属に触れていなければ運転を続けても感電しませんが、落雷の衝撃や音に驚いて車の操作を誤る危険があります。万が一のことを考慮して、すみやかに近くの駐車場や駐車帯に車を止め、天候が回復するのを待つのがベストです。

土砂災害の危険がある場所には近づかない

大量の雨が降ることで地盤が緩むと、落石や崖崩れ、土石流などの土砂災害が発生しやすくなります。土砂に車が直接巻き込まれるだけではなく、道路が寸断され孤立する危険もあります。できるだけ車での外出は控えることはもちろん、大雨の際は土砂災害の恐れのある場所へ近づかないことが大切です。

屋外にいるときの避難姿勢

屋外にいて安全な場所に避難できなかったときは、落雷のリスク、落雷によるダメージを少しでも軽減させる体勢をとること。姿勢を低くし、両足を揃えてしゃがみ、頭を下げて両手で耳をふさぎましょう。

運転中に雷雨に遭遇したときの注意点

車内で雷雲を発見


落雷をもたらす積乱雲の多くは、大雨も同時に降らせます。短時間に狭い範囲で激しく降り、わずか10分程度で河川が増水したり、アンダーパスが冠水したりすることもあります。

1時間に50mm以上の雨量がある「非常に激しい雨」「猛烈な雨」では、車を運転するのは危険。雷が鳴っていなくても、運転を控えましょう。大雨時の防災対策は以下の記事も参考にしてください。ワイパーを早く動かしても前方の視界が悪いからです。路面もスリップしやすくなっています。

参考記事:命と車を守る大雨対策。水没などへの備えと運転時の注意点

車が落雷を受けてしまったときの対処

雷雨にあった車


もしも車に雷が落ちたら、すみやかに安全な場所に停車。天候が回復してきても再び雷が落ちる可能性があるので、すぐに車外に出るのは危険です。数十分間は車内で待機しましょう。

落雷を受けても車は無傷なケースが多いですが、通電した熱でタイヤがバーストしたり、ボディに傷が残ったり、過電流によって電装品が誤作動することも。見た目では分からないダメージを受けている可能性もあるので、必ず整備工場などで検査してもらいましょう。当然、車の状態を確認するまで運転を避けるのが無難です。

保険が適用されるか確認する

車に落雷した場合は、車両保険を使用できます。必ず写真を撮っておきましょう。落雷で穴が開いたり、塗料が剥げたりします。ただ当然、被災状況や加入会社のプランなどによって金額や適用の可否が異なります。保険会社にて詳細を確認ください。

監修
河田恵昭

河田恵昭(かわた よしあき)。京都大学名誉教授。関西大学社会安全研究センター長・特別任命教授。日本政府中央防災会議防災対策実行会議委員。人と防災未来センター長。日本における自然災害に関する第一人者であり、防災・減災・縮災の重要性を説いている