車が雪道や氷結路でスタックしたときの脱出方法と注意点
車を降りてスタックの原因を探す
雪道でアクセルを踏んでいるのに車が進まなくなったら、まずは落ち着いて車と路面の状況を確認。アクセルを踏み続けるとタイヤが空転し、脱出しにくくなるからです。
次にサイドブレーキを引いてエンジンを止め、車外に出てスタックの原因を探ります。外に出る際は他の車が来ていないか注意してください。路面が凍結していることもあるので、転倒には十分に気をつけること。車外では長靴に履き替えるのが理想です。
スタックの原因は3パターンある
雪道でスタックする原因には主に下記の3パターンです。車外から車と路面の状況を確認し、スタックの原因を判断してください。
(1)バンパーや腹下が雪などに乗り上げている場合
(2)路面の凍結や深雪でタイヤが空転している場合
(3)タイヤが溝や穴に脱輪している場合
スリップして道路外に大きく脱落した場合、衝突して車が破損している場合などは、自力脱出は不可能です。すぐに110番、ケガ人がいるなら119番に通報しましょう。併せてロードサービスも手配してください。
万一スタックしてしまった場合に備えて、スコップやジャッキ、ラダーなどの脱出道具を常備しておきましょう。さらに防水性のあるグローブ、寒さ対策のブランケット、飲料水や携行食も用意しておくのがベターです。
状況に合わせて自力で脱出を試みる
スタックした原因に応じて自力で脱出を試みます。同乗者が乗っている場合は降りてもらい、車を押してもらうと脱出の成功率がぐんと高まります。周囲に人がいる場合は、援助を頼むと良いでしょう。
ただし、脱出に成功して動き出した車に救助者がひかれないよう十分に用心すること。また、救助者が滑って転倒しないよう注意を促してください。
【脱出方法1】雪に乗り上げているならバックを試みる
吹きだまった雪などに乗り上げている状況は比較的、自力で脱出できる可能性が高いケースです。
ギアをRレンジに入れ、バックできないか試してみましょう。バックできたら平坦な場所まで下がり、スタックした場所を迂回します。または、スタックした場所で前進後進を繰り返して雪面を踏み固めて再発進を試みます。
つかえている雪を人力で取り除く
バックできないときは、バンパーなどにつかえている雪を手やスコップで取り除いてから、再び発進を試みます。路面を平らにするつもりで作業するのがコツです。
腹下に雪がつかえているときは、スコップで雪を少しずつ崩しながらかきだすしか方法はありません。腹下に潜って作業すると車と地面の間に挟まれる危険があるので、絶対に避けてください。
雪を掘るにはスコップの先がとがったものよりも角型が便利。軽量なタイプなら作業がはかどりますが、雪を掘りやすい金属製の頑丈なものが理想的です。
前後に車を揺するテクニックを使う
車が少しでも動くならDレンジ(MT車の場合は1速または2速)で前進、Rレンジで後退を素早く繰り返してください。ブランコの要領で車を前後させると脱出しやすくなります。1回の前進で脱出できなくても諦めず試してみましょう。
【脱出方法2】タイヤが空転しているならグリップを確保する
バンパーなどに何もつかえておらず、脱輪もしていないのに前進できない場合は、いったんバックし、グリップが確保できる路面まで戻ります。危険箇所を迂回できるルートがないか探しましょう。
豪雪地帯の路肩などには滑り止めの砂箱が設置されているので、中から滑り止め材を取り出し、スタックしそうな場所にまくのも有効。使用は無料で、誰でも利用可能です。
一時的にタイヤの空気圧を抜くのも手
タイヤの空気圧を下げることで、雪道から脱出できる場合があります。ホイールのバルブキャップを外し、専用工具や細い棒などでエアバルブ(ムシ)を押し込むことで空気が抜けます。サイドウォールがたわみ始めた状態が目安です。
ただし、タイヤの空気圧を抜いたまま、乾いた舗装路面を走らないこと。事故やトラブルの原因となり、非常に危険です。脱出できたらできるだけ早くガソリンスタンドなどに行き、すみやかに規定数値までタイヤの空気圧を戻してください。
タイヤの下にフロアマットなどを挟むのはリスクがある
路面が十分に硬い場合など使用できる状況は限定的ですが、空転しているタイヤの下にフロアマットなどを挟むと脱出できるケースがあります。
ただ、フロアマットなどを蹴り出して猛スピードで飛ばす危険があります。加えて、毛布や布など柔らかい物は空転するタイヤに巻き込まれ、トラブルが拡大する恐れも。貴重な防寒具を失うリスクも考えると、基本的にこの脱出法は試さないのが賢明です。
空転しているタイヤの下に挟むなら、トラクションを得やすいラダーがオススメです。カー用品店などで手軽に購入できるので常備しておくと良いでしょう。
【脱出方法3】溝などに脱輪しているなら雪でスロープを作る
脱輪した場合はタイヤの前後に雪や石を詰め込み、溝や穴から脱出するためのスロープを作る方法が有効です。スロープはタイヤが乗り上げても沈まないよう、しっかりと踏み固めましょう。前述の車を前後に揺するテクニックを併用すると、さらに効果的です。
ただし、タイヤが穴や側溝に落ちた状態で車が進むと、サスペンションや駆動系を傷める恐れがあります。タイヤを乗り上げられないときは、すぐにアクセルを戻します。
車載ジャッキを利用する際は注意が必要
スロープを作る際、車載ジャッキを使って車を持ち上げ、溝や穴にはまったタイヤを浮かせてから下に雪や石を詰め込むと、より効果が増します。
しかし、この方法は路面が硬く、滑らないときにしか使えません。さらにジャッキが外れてしまうと挟まれてケガをしたり、車が損傷したりする危険があります。安全を確保するため、ある程度ジャッキアップしたらスペアタイヤなどを車の腹下に差し込むなど工夫が必要です。
最近の車種はジャッキなどの車載工具が装備されていないこともあります。万一のスタックを考えるとジャッキは別途、用意しておいた方が安心でしょう。
他車に自車をけん引してもらう
上記の方法で自力脱出できない場合、次に検討したいのが近くの車にけん引してもらうこと。当然、けん引用ロープが必要ですので持参していないなら、持っている車を探して救援をお願いすると良いでしょう。
なお、救援を求める相手は自車よりもできるだけ重い車、できれば四輪駆動車が理想。自車より軽い車でけん引するとスタック脱出できる可能性が下がり、最悪の場合は2台ともスタックしてしまうこともあります。
直線上に両車を並べてけん引ロープを付ける
ロープを弛ませた状態で連結できる距離まで自車と救援車を近づけます。次に両車のけん引用フックにロープをつなぎます。引く方向に対してロープができるだけ斜めにならない位置・方向に車を止めるのがポイントです。
けん引用フックは外部に露出しているタイプと、バンパーに別体のフックを取り付けるタイプがあります。バンパーやサスペンションに直接フックをかけないこと。車が破損する恐れがあります。
けん引時はクラクションで合図をし合う
牽引では引き始めるタイミングを合わせるのが重要。いきなり引っ張ったり、動き出したりすると事故を起こす危険があります。救援車はクラクションで合図し、自車も準備OKならクラクションで応えるとスムーズでしょう。
スタックから脱出できたと判断したら、自車のクラクションを鳴らしてけん引終了を合図。両車が止まったらロープを外してください。
けん引は自車も救援車も、車が破損する可能性を伴う作業です。事後のトラブルを避けるために安全な方法をとることはもちろん、救援を頼む際にはリスクがあることを相手にしっかりと伝えておきましょう。
ロープの種類で引き方が異なる
伸縮性のない通常のロープを使う場合、救援車はロープにテンションがかかるまでゆっくり前進してからけん引を始めてください。
一方で、伸縮性のあるクッションロープを使う場合は、ロープを弛ませた状態から一気に前進。勢いをつけてけん引します。ただし、アクセルを踏み込みすぎてタイヤがスリップしないよう加減しましょう。
ロードサービスを呼ぶ
自力脱出できず、近くに救援してくれる車もない場合は、ロードサービスを依頼しましょう。救援が到着するまでの間、他車に衝突されないようハザードランプをつけ、車両の周囲には三角表示板や発炎筒を置いて注意を促します。
待機中は低体温症に注意する
大雪で車がスタックしてしまう悪天候のときにはレスキューへの依頼も多発。混雑していて、なかなか救助に来られないことも考えられます。
車内で長時間待機する際は低体温症にならないよう「暖房をかける」「毛布を使う」など防寒対策を徹底すること。また、エコノミー症候群を誘発するので同じ体勢で居続けるのも危険です。こまめに体勢を変えるように。
ケガや体調不良の人がいる場合には、ロードサービスと同時に119番にも通報してください。
排気ガスの侵入に気をつける
車が雪に埋もれている場合、マフラーから出た排気ガスが車内に入り込み、一酸化炭素中毒に陥る危険性があります。待機中はマフラー近くの雪を常に取り除き、窓を少し開けて換気しましょう。
CREDIT
イラスト: | 田代哲也 |
写真: | 綱島剛(DOCUMENT)、Adobe Stock |
文: | 田端邦彦(ACT3) |
参考: | JAF「[Q] 雪道でスタックした場合、自力で動かす方法とは?」 JAF「[Q]豪雪で身動きが取れなくなったときの対応は?」 長岡国道事務所「Q19. スタックしたらどうやって脱出すればいいの?」 |