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雪道で安全に運転するコツ。初めての人が知ったおきたい注意点

雪道で安全に運転するコツ。初めての人が知ったおきたい注意点
積雪や凍結した路面での走行は、運転の中でも特に難しいシーンです。そこで雪道を安全に走るコツをまとめました。どんなことに気をつけたら良いのか? どんな準備をすべきなのか? など気になるポイントを解説します。

効率的に降雪情報を集める手段

気象庁のWEBサイト「現在の雪」

(引用元:気象庁「現在の雪」

豪雪は地域一帯にもたらされる災害。雪道での運転に自信があっても車を動かすことができず、他車に衝突されたり、交通マヒに巻き込まれて車内に閉じ込められたりするリスクが十分に考えられます。

そのため、雪道のトラブルを未然に防ぐには、事前に出かけ先の積雪量や路面の状況を把握しておくことが大切。外出の可否を判断し、運転する場合は最前なルートを走りましょう。気象庁やJARTIC(日本道路交通情報センター)のサイトでは、積雪や交通状況に関する様々な情報を提供しています。

気象庁「現在の雪」で積雪量を確認する

気象庁による「現在の雪」というページでは、日本全体の積雪量を見ることができます。現在の積雪深度を5km四方のエリアごとに色分けして表示。スライダーを動かすことで、過去12時間前から積雪量の変化を比較できます。

また、地図上部のアイコンを切り替えることで現在から72時間後までの降雪予報も確認可能。出かける先の状況を大まかに把握し、外出の可否を判断するのに役立ちます。

JARTICのWEBサイト

(引用元:JARTIC

JARTICのサイトで交通情報を確認する

JARTIC(日本道路交通情報センター)のサイトでは、高速道路や一般道路の渋滞情報や通行止め、チェーン規制、冬用タイヤが必要な道など様々な情報を入手可能。積雪地帯でも安全に走行できるルートがあるどうか調べることができます。

国土交通省「各地方整備局の取組 全国のライブカメラ」のWEBサイト

(引用元:国土交通省「各地方整備局の取組 全国のライブカメラ」

定点カメラの映像を活用する

目的地やルートの状況を正確に知りたいなら、国土交通省のサイト「各地方整備局の取組 全国のライブカメラ」がオススメ。各地方整備局のサイトがまとめられており、日本各地のライブカメラから現地の映像を見ることができます。

運転前に確認すべき車の点検

フロントガラスの雪を取り除く


トラブルを未然に防ぐためには、運転前の車両点検が必須。寒冷な気候や、降雪を想定した点検を行いましょう。

ワイパーのゴムや動作を確認する

雪の荒天下でワイパーが正しく動作しないと、視界を確保できず危険です。ワイパーのゴムが切れていないか、ワイパーが正しく動作するかチェック。また、スノーブレードに替えておけばフレーム内に雪が入り込みにくく、低温でも硬化しにくいので安心です。

もしフロントガラスが凍結したら、解氷スプレーで雪を溶かしてスクレーパーで払拭するのがベター。凍結したガラスにいきなり熱湯をかけると、温度差でガラスが割れてしまうからです。

衝突被害軽減ブレーキ用のカメラ(多くはフロントガラス上部)や、フロントグリル内などにあるレーダー、バンパー内にあるソナーに積もった雪も入念に落とすこと。雪が積もっていると、誤作動を起こす可能性があります。

ランプ類の球切れをチェックする

ハイビームとロービームはもちろんのこと、フォグランプやドライビングランプ、ウインカー、ストップランプが正しく点灯するかも見ておきましょう。

降雪時はランプ類に積もった雪をブラシなどで落とすこと。最近の車に多く採用されているLEDのランプは発熱しにくく、前面に雪が積もっても溶けないので小まめな確認が必須です。

ウオッシャー液やラジエター液の凍結に注意する

ウオッシャー液やラジエター液は量だけでなく濃度もチェック。濃度が薄いと、氷点下で凍結しやすくなります。量が減っていたなら、水だけでなく規定の濃度に調整して補充してください。エンジンオイルやATフルードなどオイルの量も忘れずにご確認を。

バッテリー液を確かめる

低温下ではバッテリー上がりが起こしやすくなります。バッテリーの液量が適正範囲内か、チェックランプがつくか、セルモーターの動作音が鈍いなどエンジン始動時に不調がないか確認しましょう。

メンテナンスフリーのバッテリー、密閉型バッテリーは補充不要ですが、その分バッテリー上がりの予兆を把握するのが難しくなっています。前回の交換日から寿命を予測し、早めの交換を心掛けてください。

タイヤにチェーンを装着する
 

スタッドレスタイヤだけでなくチェーンも用意する

雪道をノーマルタイヤで走行するのは極めて危険です。必ずスタッドレスタイヤやタイヤチェーンを装着すること。JAF実験によると、圧雪路ではノーマルタイヤの場合、スタッドレスタイヤの約1.7倍も制動距離が長くなる、というデータも出ました。

もちろん、スタッドレスタイヤを履いていても、残り溝が少ないと本来の性能を発揮できません。残り溝の深さが50%以下となり、スノープラットフォームが露出したら使用限界を迎えているということ。新品に交換してください。

また、チェーンを使う場合は、金属チェーンのコマやゴムチェーンのバンドが切れていないかをチェック。さらにフックや余った金属チェーンを留めておく針金などの部品が揃っているか確認してください。

ガソリンは満タンにし、軽油は凍結に注意する

大雪によって交通マヒが生じると、車内で長時間待機しなければならない状況も起こりえます。外出前には燃料を満タンに、出かけ先でも小まめに補給することが大切です。

気をつけたいのはディーゼル車の場合。寒冷地でない地域のスタンドで入れた軽油は氷点下で凍り、始動できない恐れがあります。これは、提供する地域によって軽油の成分が異なるのが原因。寒冷地に出かける際は現地のスタンドで給油するようにしましょう。

積雪時に注意したい路面状況

車と雪道


安全運転する上で最も大切なのは路面状況を見極め、正しく判断すること。運転技術を過信せず状況によっては運転を中止し、引き返す判断も必要です。

路面の状況を注視する

積雪、または凍結した路面はいずれも滑りやすいですが、その状況によって危険度は異なります。特に雪が積もったアイスバーンやミラーバーン、ブラックアイスバーンは要注意。見た目だけで判断できません。気温や日当たり、交通量など総合的な状況から判断できるよう、情報収集を徹底しましょう。

【気をつけたい路面状況1】アイスバーン

凍結した路面で、雪道の中でも滑りやすい状態です。上に雪が積もり、ただの積雪路にしか見えないので注意が必要。圧雪路などより車間距離を長めに確保し、早めのブレーキングを心掛けてください。

アイスバーンを発見するのは困難で、対策としては外気温計で氷点下になっていないか確認することが挙げられます。また、日陰や北向きの道、橋の上など凍りやすい場所はアイスバーンを疑うとよいでしょう。安全な状況なら軽くブレーキを踏み、滑りやすさを確認するのも有効です。

【気をつけたい路面状況2】ミラーバーン

凍結路を多くの車が通行し、ピカピカに磨かれた路面。交通量の多い交差点などに出現する傾向にあります。

【気をつけたい路面状況3】ブラックアイスバーン

路上に流れた水が凍結した路面。アスファルトの色が見えており、ただの濡れた道にしか見えません。湧き水が流れ出している山間部の道などでは、特に注意してください。

【気をつけたい路面状況4】圧雪路

圧雪路とは、雪が踏み固められた状態の路面。雪道の中では比較的走りやすい路面ですが、気温が上がってシャーベット状の雪が薄く積もった場合や、解けた水分が凍結している場合には、アイスバーン同様に滑りやすくなります。慎重な運転が必要です。

【気をつけたい路面状況5】深雪路

駐車場や路肩では雪が踏み固められていない路面。吹きだまりになっている深雪路では、スタッドレスタイヤの効果もほとんどありません。深雪路に入るときには必ずタイヤチェーンを装着しましょう。

雪道で安全運転するポイント

雪道での走行


雪道での運転は、急のつく動作をしないことがセオリー。無理をしない安全運転のポイントを説明します。

発進する際はゆっくりとアクセルを踏み込む

車の発進はタイヤを空転させてしまいやすいので注意が必要です。AT車ならセカンドギアもしくはスノーモードで、MT車なら2速にシフトして発進。MTのスポーツカーなどエンストしやすい車の場合、1速で半クラッチを長めに使用します。

少し動いたらアクセルをゆっくり踏み、車が前進し始めたタイミングで少しだけアクセルを戻してあげると、空転を防ぐことができます。

スタッドレスタイヤでも発進時に空転してしまうようなら、その後の走行も難しいということ。タイヤチェーンを装着する、外出を中止するなどの対策を取りましょう。

4WDや先進装備は積極的に利用する

4WD車はFFやFRなどに比べて、雪道でも楽に発進できます。駆動方式を切り替えるパートタイム式4WD車なら、発進前にトランスファーレバーが4WDにシフトされているか確認しましょう。フルタイム式やトルクスプリット式なら通常走行時から4WDになっているので、操作は必要ありません。

TRCなどトラクションコントロール、VSCなど姿勢制御のオンオフを切り替えられるなら作動しているか確認ください。一般的にはエンジン始動時に自動でオンになります。

一定のアクセルで慎重に車線変更する

走り始めた後もアクセル操作はできるだけ一定に保ち、急加速や急減速を控えます。前方車両との距離を十分に空けることも大切です。

ブレーキペダルを踏んでから車が止まるまでの「制動距離」は路面状況によって異なりますが、乾燥路を走るときの3~4倍は車間を空けることを心掛けてください。

道に轍がある場合は無理に逆らおうとしないこと。轍に沿って走った方が安定します。2車線以上ある道路を走るときも、追い越しなど急な車線変更は避けましょう。やむを得ない場合は慎重に車線変更しましょう。

雪道で速く走る車
 

ステアリングは穏やかに操作する

ステアリング操作もアクセルと同様です。最低限の舵角で、できるだけ穏やかな操作を心掛けしょう。雪国では華麗に走行する車を見かけますが、基本的にはステアリング操作だけで危険を回避するのは難しいでしょう。

車の走行ラインがコーナー外側に膨らむ「アンダーステア」や、車のリアが外側に流れた車体がコーナー内側に向く「オーバーステア」に陥るのを未然に防ぐことが大切です。

減速時は早めにブレーキを踏む

雪道では、制動距離が通常路面の何倍も長くなります。そのため車間距離を十分に取り、いつもより早めにブレーキを踏むことが大切です。

JAFの実験では、チェーンを装着した車が圧雪路を時速40kmで走った場合、24.8~27.6mの制動距離が必要(チェーンやタイヤの種類によって異なる)という結果になりました。

乾燥路面での制動距離は時速40kmなら10m前後(空走距離を除く)が一般的なので、雪道では2~3倍も長くなっています。より摩擦係数の低いアイスバーンではさらに長い距離が必要。早め早めのブレーキを心掛けてください。

ABSの作動と効果について

かつて教習所では、滑りやすい路面はペダルを踏んだり離したりする「ポンピングブレーキ」をするよう教えていました。しかし、現代の車はほぼすべてABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が装着されているので、ポンピングする必要はありません。

普段ABSが作動することはあまりありませんが、圧雪路やアイスバーンでは驚くほど頻繁に作動します。ABSが作動するとブレーキペダルへの反動があるので、驚いて足を離さないように。

なお、ABSは短い距離で止まるためのものではなく、タイヤをロックさせないことで、舵が利くようにするための装置です。緊急ブレーキをしてABSが作動してもステアリングを操作し、危険を避けるようにしましょう。

坂道を一気に上れない場合は迂回する

勾配のきつい坂道では、特にタイヤがスリップしやすくなります。上り坂の途中でタイヤがスリップしてしまった場合はそこから再発進しようとせず、平坦な場所まで下りてから発進すると上りやすくなります。坂が長く続く場合は上るのを諦め、迂回するなど安全を優先して走行ください。

実際JAFの実験によると、圧雪路ではノーマルタイヤだと12%勾配の坂を上れず、スタッドレスタイヤであっても20%勾配の坂を平坦路から助走をつけた状態からでしか上れませんでした。雪道では登坂は難しいのです。

車がスタックしたときの対処

雪に埋まった車を救出


雪道では深雪などにタイヤを取られてスタックしてしまうことがあります。軽度のスタックなら自力で脱出することも可能ですが、脱出方法は状況によって異なります。

雪にタイヤが埋まったら路面を固める

まずは車をゆっくり前後に動かして、タイヤ周辺の雪を踏み固めます。事前にタイヤ周辺の雪をスコップで取り除いたり、足で踏み固めたりすると、より効果的です。準備が整ったら前後進を繰り返し、車を振り子のように動かしながら脱出を試みます。

それでも脱出できないときは、広幅板(脱出プレートなど)やチェーンなどをスタックしているタイヤと地面の間に挟み、ゆっくりと発進。その際アクセルを踏むと挟んだ物が飛び出す可能性があるので、十分注意しましょう。

なおFR(後輪駆動)車の場合は、後部座席に何人か乗ってもらい、駆動輪の荷重を高めるのも有効です。

アイスバーンで発進できない場合は砂をまく

タイヤが空転するときは、豪雪地帯では路肩に設置されている「砂箱」内の砂袋を取り出し、タイヤの外周や路上に砂をまきましょう。もちろん、スタックした場所の近くに人がいるようなら、救援を求め、車を押してもらうのも一案です。

場合によってはタイヤの空気圧を一時的に下げ、タイヤの接地面積を増やすのも有効。タイヤのバルブをドライバーの先端などで押して空気を抜き、タイヤ側面が少したわむ程度まで空気圧を下げます。空気が抜けた状態で一般路を走るのは危険なので、脱出後はガソリンスタンドなどに立ち寄り、すみやかに空気圧を適正に戻しましょう。

車外に出て脱出作業するときは、滑り止めの付いた長靴に履き替えること。車外に出た瞬間、凍結した路面で滑るのを防ぐためです。救援作業を終えて車内に戻ったら、面倒でも運転用の靴に履き替えてください。長靴は底面が広いためペダルを踏み間違えやすく、底に雪が付いていたりするため運転には適しません。

それでも脱出できないなら救援を依頼する

自力脱出が不可能なら救援を頼むしかありません。他の車が通る場所で、けん引ロープを持っている場合は、他車に協力をお願いして脱出を図ります。

まず、けん引ロープの一方を救援車のバンパー下部などにあるU字型やO字型の「けん引フック」(装備されていない車種もある)に付けます。そして、もう一方を自車のけん引フックにつないで、けん引ロープの緩みがない状態にします。そこから両車同時に発進を試みましょう。

上記が難しい場合、JAFなどのロードサービスに連絡するのがベター。JAFの最寄りのコールセンターへは「#8139」で、電話がつながります。救援が到着するまで車両後方に三角表示板や発炎筒を置いて注意喚起し、安全を確保してから待機してください。なおJAFのロードサービスは会員でなくても有料で依頼できます。