▲廃車には一時抹消登録と永久抹消登録の2種類がある。いきなり廃車にする前に、まずは処分する方法が他にないか考えよう ▲廃車には一時抹消登録と永久抹消登録の2種類がある。いきなり廃車にする前に、まずは処分する方法が他にないか考えよう

廃車には種類がある! 廃車に必要な知識を総まとめ

廃車=スクラップにすること、と思っている人も多いだろう。だが廃車には種類があり、必ずしもスクラップにするとは限らない。

廃車とは何を意味するのか、廃車するための手順、必要な書類などを見ていこう。ポイントは「廃車にすべきかどうかの判断を見誤らないこと」、そして「適切な依頼先を選ぶこと」だ。

廃車の手続きは2種類ある

一般的に廃車とは、ナンバープレートを外して「車を使えない状態」にすることを指す。しかし、法的には廃車は2種類に分けられる。「一時抹消登録」か「永久抹消登録」だ。両者は同じ抹消登録だが、その目的や内容はまったく違う。

・一時抹消登録
ナンバーを返納し、公道を走れない状態にする手続き。車は最初に登録した時から陸運局に車両情報や所有者、使用者などの情報を管理される。一時抹消登録すると、その情報更新がいったん停止され、再登録するまでの期間は課税が免除される。車はあるが公道を走らないなど、再登録することを前提に一時抹消登録の手続きを行うケースが多い。

買取店が車を仕入れ、販売店が次の所有者に売るまでの期間は、課税を免れるために一時抹消登録することが多い。オートオークションなどでは利便性の観点から「車検の残期間が1ヵ月未満の車は一時抹消登録されていないと出品できない」という規定が設けられている。

一時抹消登録中の車をスクラップにして登録自体を抹消する場合は、「解体届出」を陸運局(軽自動車は軽自動車検査協会)に出さなければならない。

・永久抹消登録
車を解体や滅失、用途廃止したことを届け出て、かつ登録を永久に消滅させる手続き。「既に解体されている」「盗難などで行方が分からない」ことが条件で、「解体する予定」では登録できない。また、永久抹消登録を行うと盗難車が見つかっても再登録は不可能となる。

軽自動車は軽自動車検査協会が車の登録情報を管理しているため、呼び名は一時抹消登録が「自動車検査証返納届」、永久抹消登録が「解体返納」となる。内容はどちらも同じだ。

▲永久抹消登録するには、解体済みであることが条件▲永久抹消登録するには、解体済みであることが条件

廃車にするかどうかの判断は?

使わなくなった車、動かない車を処分したいからといって、いきなり解体業者に持ち込むのは早計。一見、価値がないように見える車も、もしかしたら想像以上の価格で買い取ってもらえる可能性がある。車を処分したい時には以下のような選択肢がある。(1)から順に試してみるのがオススメだ。

(1)買取店に査定依頼する
「屋外に長期間放置されていた」「事故で原形を留めていない」といったケース以外では、不動車でも一般的な買取店や販売店に売れる可能性がある。まずはダメ元で査定してもらおう。

特定の買取店に直接問い合わせる方法のほか、一括査定を利用する手もある。例えばカーセンサーの一括査定なら、申込み時に入力する項目の「車の状態」欄で「走らない」にチェックすればOK。不動車を前提とした買取店の候補がリストアップされる。

(2)不動車・事故車専門店に査定依頼する
事故で破損していて走れない、エンジンが故障して走らない、といった車を専門に扱っている買取店がある。自車の状況に合わせてWEBで「事故車+買取」などのキーワードで検索すれば、多数の買取店が表示されるはず。不動車・事故車専門の買取店は廃車にせずに修理して販売するため、廃車専門の買取店より高く買い取ってくれる可能性がある。

(3)廃車専門店に廃車を依頼する
買取店で値段がつかないと言われたら、廃車専門店に廃車を依頼するのが次なる手段。廃車には通常、解体費用と廃車手続きの代行費用、陸送代(不動車の場合)などがかかるが、多くの廃車専門店ではこれらの費用が無料となる。所有者自身での手続きも不要で、通常の車売却と同じように車と必要書類と引き渡すだけだ。

しかも多くの場合、買取額をつけて車を引き取ってくれる。0円のところもあるが、解体費用を支払わなくて良い分オトクだ。WEBで「地域名+解体業or廃車」などのキーワードで検索するなどすれば、最寄りの業者を見つけれれるだろう。

(4)解体業者に廃車を依頼する
多くの解体業者では、車をスクラップにするだけでなく廃車の手続きも行ってくれる。ディーラーや販売店に廃車を依頼しても最終的には解体業者に車が渡るので、中間マージンがない分、解体業者に直接依頼した方が安くつきやすい。

段取りとしてはまず、インターネットで最寄りの解体業者を探し、解体を依頼。車と必要書類を引き渡すと、後は廃車手続きを代行してくれる。通常の売却と手間は同じだ。

支払う費用の相場は解体費用が1~3万円程度、手続き代行費用と法定費用が1~2万円程度、合わせて2~5万円。さらに自走不可能なら陸送代1万5000円~2万円が必要となる。自動車リサイクル制度が施行された2005年以降、一度も車検を受けずに放置されていた車にはリサイクル料金もかかる。

▲2005年以前から放置されていた車は、リサイクル料金を払っていない可能性大。その場合は永久抹消登録の際にリサイクル料金がかかる▲2005年以前から放置されていた車は、リサイクル料金を払っていない可能性大。その場合は永久抹消登録の際にリサイクル料金がかかる

廃車を代行してもらう時の必要書類と手続き

一時抹消登録と永久抹消登録では、手続きに必要な書類が異なる。一般的には代行業者に依頼するケースが多いだろうから、まずはその説明をしよう。

【一時抹消登録を代行してもらう場合】
車を売却せず、一時抹消登録だけを専門業者に代行してもらう場合、以下の書類が必要となる。車を陸運局や軽自動車検査協会まで持ち込んだり、業者の店舗に運んだりする必要はない。手続きは整備工場などの他、行政書士事務所などでも代行してもらえる。WEBで「地域名+一時抹消登録」で検索すれば、代行してくれる業者を見かるはずだ。

■所有者が用意するもの
・自動車検査証(車検証)

一時抹消登録するには、車検証を陸運局(軽自動車は軽自動車検査協会)に返納する必要がある。返納後は車検証がなくなるが、代わりに「登録識別情報等通知書」(軽自動車は「自動車検査証返納証明書」)が発行される。

登録識別情報等通知書は、車の使用を再開する際、車検を受けるのに必要となる。また、自賠責保険料の返金を受けるのにも使用する。

普通自動車で自動車検査証と印鑑登録証明書の住所が違う場合は、以下の書類も必要だ。

・住所変更が一度あった場合:住民票(法人の場合は登記簿謄本)
・住所変更を複数回経た場合:戸籍の附票または住民票の除票
・結婚などで姓が変わっている場合:戸籍謄本(履歴事項全部証明書)

・印鑑登録証明書(軽自動車は不要)
市区町村役場で発行してもらう、実印の印影が示された証明書。

・実印(軽自動車は認印可)
普通自動車を一時抹消登録するには、委任状に捺印するため所轄の市区町村で登録した印鑑が必要。軽自動車は認印で問題ない。

・ナンバープレート
車検証とともに、ナンバープレートも外して返納する。封印を外す必要があるので、整備工場などに依頼するのがベター。

■代行業者などに用紙があり、記入するもの
・委任状

実印で捺印し、所有者本人が代行を依頼したことを証明する書類。

▲車を売却する際と必要な書類よりも少ない。最大の違いはナンバープレートの返却があること▲車を売却する際と必要な書類よりも少ない。最大の違いはナンバープレートの返却があること

【永久抹消登録・解体届出を代行してもらう場合】
永久抹消登録や解体届出を提出するには車が既に解体されている必要があるため、基本的には手続きは解体業者や廃車専門の買取店で行う。

上記の一時抹消登録で必要な書類に加え、永久抹消登録には以下の書類も必要になる。車の引き渡し時に、一緒に業者に渡せばOKの場合が多い。

・自賠責保険証明書(引き取りの場合のみ)
永久抹消登録の手続き自体には不要だが、解体業者などが車を引き取って移動する際には必要。自賠責保険が有効期間内なら自走で移動できる。有効期間が切れている場合でも、解体業者や廃車専門業者は積載車での陸送に対応しているので問題ない。

・振込口座情報
廃車買取店が買い取った金額が振り込む金融機関名・支店名・口座名義などの情報。

・リサイクル券
自動車リサイクル制度に基づいてリサイクル料金を支払ったことを証明するチケット。2005年の施行から一度も車検を通していない車の場合は、解体する際に業者が支払うため、追加費用が必要になる。

・「移動報告番号」と「解体報告記録がなされた日」のメモ書き
「移動報告番号」はリサイクル券に記載されている。「解体報告記録がなされた日」は解体を依頼した業者に直接問い合わせるか、自動車リサイクルシステムのホームページにて使用済自動車処理状況を検索。車台番号下4ケタと登録番号を入力すると確認できる。

 ▲上記は普通自動車の場合。軽自動車の場合には、印鑑登録証明書が不要となり、実印は認印でOK ▲上記は普通自動車の場合。軽自動車の場合には、印鑑登録証明書が不要となり、実印は認印でOK

廃車を代行してもらう時の必要書類と手続き

自分で手続きする人は少ないだろうが、念のため、その必要書類もまとめた。自分で手続きする場合は、一時抹消登録と永久抹消登録でほとんど違いはない。

【自分で一時抹消登録の手続きを行う場合】
廃車を代行してもらうのに必要な書類(委任状は不要)に加え、陸運局(軽自動車は軽自動車検査協会)にて以下の書類を提出しなければならない。申請書などの用紙はすべて現地に用意されている。

■一時抹消登録
・一時抹消登録申請書
・手数料納付書
・「自動車・自動車取得税申告書」


自動車・自動車取得税申告書は運輸支局に隣接する税事務所で用紙が配布されている。地域によっては不要となる。

【自分で永久抹消登録の手続きを行う場合】
一時抹消登録の場合と同様、代行をお願いした場合に必要な書類に加え、下記3種が必要となる。

■永久抹消登録および解体届出
・永久抹消登録申請書、または解体届出書
・手数料納付書
・「自動車・自動車取得税申告書」


実は永久抹消登録と解体届出の申請書は同じ用紙。永久抹消登録か解体届出かどちらかにチェックを入れ、必要事項を記載する。

廃車するときのポイント

普通自動車を一時抹消登録した場合、既に納めた当該年度分の自動車税の一部が返ってくる。自動車税は毎年4月を起算月として来年3月までの分を納めているので、抹消登録した月の翌月から3月までの分を月割で返金される。廃車手続き後1~3ヵ月程度で、抹消時点での所有者に通知ハガキが送られてくる。

自賠責保険料も同様。保険会社に「登録識別情報等通知書」を送ることで、残期間分の返金を受けられる。永久抹消登録した場合は、重量税の還付もある。ただし、解体業者が事前に名義変更して永久抹消登録を行った場合には業者に還付される。還付分が買取金額に含まれているかどうか、依頼する段階で確認しておこう。

なお軽自動車の場合、自動車税の還付制度はない。重量税と自賠責保険料については普通自動車と同様だ。

無駄に保管しているだけなら今すぐ売却

乗らない車でもナンバーを付けたまま放置していると、自動車税が課せられるばかりでなく価値もどんどん下がっていく。将来また乗るつもりなら一時抹消登録を、手放すなら永久抹消登録を速やかに行うことがオススメだ。

買取店に売れる可能性が少しでもありそうなら、まずは一括査定を依頼してみよう。抹消登録するかどうかの判断を売却先に任せるのも手だ。

text/田端邦彦
photo/田端邦彦、photoAC