▲日本で一番売れているドイツ車とはまた違う魅力があるのがイタリア車。写真がアルファロメオ 147GTA ▲日本で一番売れているドイツ車とはまた違う魅力があるのがイタリア車。写真がアルファロメオ 147GTA

真面目で高精度な人ほどイタリア車が「効く」可能性は大

いよいよ新年度である。思えば小学校から高校までは(学校にもよるが)この時期「クラス替え」というものがあり、何かと新鮮な気持ちになれたものだ。しかし大人になると「新年度のクラス替え」的なものには縁がなくなり、新年度になろうがなるまいが、ある意味惰性のような毎日が続いていく。

それはそれで安定した心地よい日々ではあるのだが、やはりときには何らかのドラスティックな変化があったほうが、生活というのは盛り上がるものだ。で、子供の頃は「クラス替え」により強制的にドラスティックな変化を経験させられたわけだが、大人となった我々の新年度にはそれがない。となれば、我々は自分自身で意識的に「クラス替え的な何か」を行う必要があるのかもしれない。

そこで提案したいのが「車のクラス替え」だ。

人間の潜在意識というのは基本的に「現状維持」を好むため、人は多くの場合、似たようなタイプの車を代々乗り継ぐことになる。セダンが好きな人は何台も続けてセダンタイプの車に乗り、ハッチバックを好む人は代々ハッチバックを買う。またあるいは「車の国籍」の現状維持傾向というのもあるだろう。

「車の国籍」における現状維持傾向が特に顕著なのは、輸入車の世界でいえば「ドイツ車に乗ってる人」なのではないかと感じている。

▲外資系企業の立派なオフィスにいるかのような気分になるドイツ車の内装。もちろんこれはこれで悪く無いですが……。ちなみに写真は旧型フォルクスワーゲン ゴルフ ▲外資系企業の立派なオフィスにいるかのような気分になるドイツ車の内装。もちろんこれはこれで悪く無いですが……。ちなみに写真は旧型フォルクスワーゲン ゴルフ

最初は「輸入車といえばまぁ、ドイツ車だろう」といった何となくのニュアンスでドイツ車を買う。そしてその独特の重厚感や走行安定性、あるいは信頼性などを大いに魅力と感じるようになり、次第にドイツ車以外の選択肢は考えもしなくなる人は、ここ日本では結構多い。かく言う筆者も過去にドイツ車専門誌を立ち上げたことがあるくらいドイツ物の精度感が好きなので、その気持ちは非常によくわかる。

しかしだからこそ、ドイツ車ユーザーには「クラス替え」すなわち愛車の国籍を変えてみることをこの新年度、提案したいのだ。ドイツ車というのは「剛性感」「重厚感」「信頼感」のようなものの極北であるゆえ、それとは真逆の方向に一度進んでみることで、より大きな果実と経験を得ることができるからだ。

では、ドイツ車の真逆の方向に位置するものとは何か? それは言うまでもなく「イタリア車」だ。それも、最近のややドイツ車っぽくもなったそれではなく、ちょっと前の華奢なイタリア車である。

▲ドイツ車のコックピットが「外資系企業の立派なオフィス」なら、こちらは「夜のラウンジ」といったところか? ちなみに写真は03年式アルファロメオ GTV ▲ドイツ車のコックピットが「外資系企業の立派なオフィス」なら、こちらは「夜のラウンジ」といったところか? ちなみに写真は03年式アルファロメオ GTV

ドイツ車の四角四面で几帳面な感じ、ちょっとした有名企業の整然としたオフィスで働いているかのような「あの感じ」に慣れた身には、ちょっと前のイタリア車の「雑な感じ」「あまりにも耽美志向な造形」「何かあるとソッコーで壊れてしまいそうな雰囲気」というのは、恐怖であり、背徳感を伴うものである。また筆者の場合は過去ドイツ車から初めてイタリア車に乗り替えてみた際は、イタリア車ならではの「イカしてる感じ」が最初のうちはこっ恥ずかしくで仕方なかった。

が、慣れてみればそんなことはすぐにどうでもよくなる。というかそれ以上の「世の中にはこんな世界もあったのか!」という感動に打ち震えるまでに、そう多くの時間はかからないはずだ。それは具体的には、耽美的な造形とセクシーなエンジンフィールがもたらす「生の歓び」であり、そこそこ雑であっても実は結構なんとかなるものだという世の中の実相を、身をもって知る貴重な体験でもある。真面目なドイツ車を愛好していた真面目で高精度な人ほど、ちょっと前のイタリア車の背徳的でセクシー、そしてテキトーなキャラクターは大いに「効く」はず。たぶんですが、人生変わるでしょう。

以上の考えをもとにドイツ車ユーザーがイタリア車への「クラス替え」を図るとしたら、選ぶべきモデルは何だろうか。「イタ車なら何でもいい」という考え方もあるが、筆者がオススメしたいのはアルファロメオだ。それも直列4気筒や直噴JTSではなく、往年のV6エンジンを搭載していたモデルがいい。

▲筆者が過去所有していたアルファロメオ GTVの3L V6エンジン。音もフィールもとにかく最高だった ▲筆者が過去所有していたアルファロメオ GTVの3L V6エンジン。音もフィールもとにかく最高だった

ちょっと前のイタリア車で味わうべきは、繰り返し述べてきたとおり「セクシーなデザイン」と「生の歓びを感じる超痛快エンジン」だ。そのためには、実用的なフィアットではほんの少々弱く、フェラーリやランボルギーニはいろいろな意味で身近ではなく、旧世代アルファロメオの中でも直4ツインスパークや直噴JTSエンジンは、決して悪くはないが、決して最高のフィーリングでもない。となると、自動的に「往年のV6エンジンを搭載したアルファロメオの各モデル」ということになるのだ。

流通量と価格等の現実味から勘案すると、今選ぶべきV6アルファは素の156と、156および147のGTA。そしてやや数は少なくなるがクーペのGTVと、そのオープン仕様である先代スパイダー。あるいは後席もそこそこ広い2ドアクーペであるGT。それらモデルの「V6」が、新年度を機に生活と気持ちを変えてみたいと考える人にとっては最高の選択だ。正直燃費はイマイチな場合も多いだろうが、その出費に対して十分なお釣りがくるほどの衝撃と感動がそこにはある。特に、これまでドイツ車しか所有したことがない人ほど、その衝撃はいろいろな意味でデカいだろう。

ということで今回のわたくしからのオススメはずばり「往年のV6搭載FFアルファロメオ」だ。

▲独特のデザインがクセになるアルファロメオGYV。中期型が3Lで後期型が3.2L、どちらも当然V6だ ▲独特のデザインがクセになるアルファロメオGYV。中期型が3Lで後期型が3.2L、どちらも当然V6だ
▲研ぎ澄まされた3.2LのV6エンジンを搭載するアルファロメオ 156GTA。外観デザインもステキだ ▲研ぎ澄まされた3.2LのV6エンジンを搭載するアルファロメオ 156GTA。外観デザインもステキだ
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  • Car:アルファロメオ 156&147&GTV&GT&スパイダー
  • Conditions:V6エンジン搭載モデル
text/伊達軍曹