【乗るならラストチャンス!】ホンダ脅威のメカニズム、唯一無二のオープン機構をもつCR-Xデルソル
2016/02/18
あなたを太陽の下へいざなうデルソルの「トランストップ」
人とは違う車に乗りたい。車で個性を主張したい。そんな思いをかなえてくれるのがドレスアップ&カスタムだったりしますね。最近では自動車メーカーも純正でカスタムパーツやカスタムカーを発売するほど、ドレスアップは市民権を得ました。
一方でどれだけ個性を主張したいと思っても難しいことがありました。それはボディタイプ自体に手を入れること。ミニバンをどれだけドレスアップしてもミニバンのまま。中にはセダンのルーフをぶった切ってオープンカーにするという荒技もありますが、ボディ剛性や安全性を考えるとオススメできません。
ただ、自分の意志でボディタイプを変えてふたつの個性を主張できるパターンがひとつだけあります。それはクーペ⇔オープンの変更。幌ではなくハードトップを付けることでクーペとオープン、両方の雰囲気を楽しむことができるのですね。
この形が発展し、電動開閉式のルーフを備えるクーペカブリオレと呼ばれるジャンルも登場しました。国産車だとダイハツ コペン、輸入車ではBMW Z4やメルセデス・ベンツ SLK、プジョーのCCシリーズなどが有名です。
クーペカブリオレの発想は1930年代からありましたが、この仕組みをいち早く取り入れ、世界を驚かせた日本車のこと、ご存じですか? というよりは、覚えていますか? どの車のことかといえば、1992年に登場したホンダ CR-Xデルソル(del Sol)。
詳しい方はデルソルが登場する3年前、トヨタが電動格納ルーフを備えるソアラエアロキャビンを発売していたことをご存じかもしれません。しかしこれは500台限定のレアグレード。今のようにインターネットが一般的ではなかった時代ですから、普通の人が目にする機会はまずありません。一方でデルソルは開発時からクーペとカブリオレの両方を前提にしており、カタログモデルとして発売された点が画期的だったのです。
屋根がフタの中へ……驚きの格納方法
電動オープン機構は“トランストップ”と呼ばれ、上級グレードのSiRに設定されていました(他はハードトップを手動でトランクに格納する仕組み)。トランストップのすごかったところはルーフの格納方法です!
現在のいわゆるクーペカブリオレは、幌モデルと同じような形でルーフが中折れする形でトランクに収まります。しかし、デルソルはスイッチ操作をすると、トランクリッドが真上に上昇。そしてリッド内から2本の腕が出てきてルーフをキャッチ! そのまま持ち上げてトランクリッドの中にしまい、何事もなかったかのように元の位置に戻っていきます。クローズするときは逆の流れです。
この光景はまさにトランスフォーム! 僕らはモノの形が変形するなんてこと、ロボットアニメの世界(およびその超合金)でしか起こり得ないと思っていましたからね。それが突然目の前で華麗な変体をやってのけるやつが現れたのですから。ちょうど「勇者ライディーン」や「超電磁ロボ コン・バトラーV」などを見て育った世代が自分のお金で車を買えるようになったときに登場したこともあり、デルソルは大きな話題となりました。
一方でデルソルは自ら大きな矛盾を抱えることにもなります。ご存じでしょうがデルソルの元祖は1980年代におけるライトウェイトスポーツの代表格、CR-X。コンパクトボディにリッター100馬力を発生する1.6L VTECを搭載したSiRは、走り屋はもちろん、F1の「セナ・プロ対決」に燃えたホンダファンなどからも絶大な支持を受けました。
ところがデルソルは、トップグレードのSiRに重量がかさむトランストップを搭載しました。SiRにはトランストップ非搭載グレードも設定されたものの、ピュアな走りを求めるユーザーが離れてしまったのです。1994年9月、廉価グレードのVXiにもトランストップ仕様が設定されましたがあまり普及せず、1998年12月に生産終了となりました。先代まで大ヒットしたモデルながら、3代目(デルソル)はかえって貴重な存在になってしまったのです。
ちなみにその他の電動ハードトップ搭載モデルは、1997年2月に登場したメルセデス・ベンツ SLKが大ヒット。そして幌と同じように開閉するスタイルが急速に普及しました。その先駆けであると同時に異質なデルソルのトランスフォームスタイルは、登場時を知らない世代にとっても驚きないし魅力的に映るのではないでしょうか。
2月10日時点でカーセンサーnetに掲載されている中古車の数は14台。そのうちトランストップ仕様は11台でした。今後は流通台数がさらに減っていくことでしょう。20年以上前に感じた驚きを味わうなら、今がラストチャンスですよ!
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